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01.22歳、春
どうしてこうも遠いのだろう。
制服を脱ぎ捨てて、でっかいキャンパスに辿り着いたと思えば、スーツを着てするりするりと私の世界から抜けていく。
たった3つだ。3つの年の差がここまで重いなんて思わなかった。
世界が違う、未来が違う。
それでも、大人になればその背中に追い付くと信じていた。信じることが出来たのは10代特有の夢見がちな思考のおかげで、22歳の私の未来はものすごくリアルに差し迫っていた。
リクルートスーツを着て、OB訪問をし、たいして面白くない先輩の話を笑顔で聞く。
ピタリと張り付けた、造り物の笑顔は、私をどんどん駄目な大人にしていく気がしていた。
「スーツ、似合うじゃん」
大学の裏のスターバックスで、私を見るなり開口一番ケイちゃんは言った。
「そう?」
「俺よか全然似合う。サク、顔が老けてるから」
「超失礼なんですけど。」
そう言って眉を顰めると、ケイちゃんは悪戯っ子のように笑った。
少し重めの前髪とベビーフェイスのケイちゃんは、
いくらスーツを着ていても、年より若く見える。
細身のスーツは明らかに高級そうで、自分のペラペラのリクルートスーツを恥ずかしく思った。
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