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私の耳には、もう賛美歌は聞こえませんでした。
いえ、あまりの光景に、本当に誰もが歌うのを忘れてしまっていたのかもしれません。
天を目指して、ゆるりゆるりと昇っていく、7つの氷衣。
その威厳に圧倒され、降っている雪さえも動きを止めたかのようでした。
とつぜん、霧が晴れるように、頭がはっきりしました。
罪。
私は、ふらふらとあゆみいでて、いちばん近いところに立っていた工女の腕をつかみました。
「みね子さんは、みね子さんはどこ?」
罪。
その工女はギョッとした様子で振り向き、しどろもどろに答えました。
「昨日、お暇乞いをされて、お国へ帰られましたわ」
罪。
私は具合の悪いことも忘れて、雪に足を取られながら、工女たちを押しのけて進みました。
大人たちの声が聞こえ、男の人が何人か、私の方に向かってきました。
罪。
罪。
罪。
私は取り押さえられ、真綿のような雪に膝をつきました。
氷衣は、暗い空にもうほとんど消えています。
「私の罪も取り除いてください!」
声を限りに叫んだつもりでしたが、おかしなくらいに通りませんでした。雪が吸ってしまうのでしょう。もどかしくて、大人たちに押さえられるのもいやで、私は駄々っ子のように暴れました。
「私は、みね子さんに対してひどいことをしてしまいました。お願いです。この罪を結晶化して、浄化してください! お願いします! お願いします!」
叫びながら、悶えながら、私の目には、氷衣が灼熱の太陽に浄化されるさまが、ありありと見えていました。
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