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あれから50年が経ちました。
ご存じの通り、欧米列強が主導する形で、人類は天人に対し反乱を起こしました。
善人ばかりの、清らかな世界。
そんな世界に、大人達は恐怖を抱いたのです。
善人ばかりの、清らかな、退屈な世界。
天人は、反乱する人類に手を下すことはしませんでした。
ひっそりと立ち去っただけでした。
それからあとは、皆様もご存じの通りです。
天人がいなくなっても、人類は争うことをやめませんでした。天人に向けられた恐怖は、同じ人類の他集団への疑心暗鬼にすり替わり、争うこと自体が目的と化し、殺戮の限りがつくされました。
世界人口は半減し、物質的にも精神的にも傷跡は深く、50年経った今もなお、私たちは回復の途上にあります。
私が考えますに、天人は来るのが遅かったのです。
人類がまだ、あらゆる罪を許すことができない少女のようであったなら、御一新もうまくいったのでしょう。
彼らがやって来たときには、人類は少女時代をとうに過ぎてしまっていたのです。
(了)
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