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「天人はこの地球を御一新なさったとき、御技によって私たち人類の罪を浄化する計画を立てられました。  その御技ではまず、人間の中にある罪を結晶化します。痛みもなく、外科手術もいりません。結晶化した罪は、気体搬送ユニットが宇宙空間まで運んで行きます。そのために、みなさんに10か月かけて氷衣を作っていただいたのです。みなさんが手にした結晶は、刑務所に入っていた人たちの罪です。その人たちは罪を取り除かれましたから、もう刑務所を出て普通に生活しています。  この処置は、まず刑務所から始められ、いずれ一般人にも施される予定です。  よいですか。刑務所に入っていなくても、私たちはみな罪びとです。刑を受けている人と、私たちの間にはなんの違いもありません。罪とは、盗みや人殺しだけではないのです。度を過ぎて欲しがること、他人を蔑むこと、嫉妬すること、このような心はすべて罪です。さあ、皆で賛美歌を歌い、気体搬送ユニットの降臨を待ちましょう」  私はまだ頭がぼんやりしていて、所長が何をおっしゃっているのか、よく理解することができませんでした。  賛美歌の斉唱がはじまりました。  乙女たちの歌声は、降りしきる雪に吸われて、か細く原野に降り積んで行きます。    やがて、降りて来ました。  暗い空から。  雪とともに。  実体はありません。ただ、降りしきる雪がその形に歪むのです。  天から飴のように垂れ下がった御使(みつかい)ーーー気体搬送ユニット。  それらは、雪原に横たえられた氷衣の中にゆっくりと入り、悠々と泳ぐ海蛇のように身を起こします。
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