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「なに? お前雪嬉しいの?」 前を歩く背中に声をかけると、首だけちょっとひねって 「おぉ。だって俺、日本の冬初めてだもん」 ニカッと笑って、驚きの言葉を口にする。 「えっ? そうなのかよ。 なに?どういうこと? お前、どこから来たんだ?」 『日本の冬』のセリフに驚いて質問の嵐を口にした。 いや、だってさ。 ここ札幌大学は、国内でもなかなか人気のある大学だから、かくゆう俺だって東京出身なわけで。 これでも北海道に来たばかりの頃は、11月に降る雪が珍しくて。 初雪に心躍らせたものだった。最初の一年はな。 けれど、もう四年ともなれば「あぁ、またこの季節がやって来やがった」的な具合で。 雪かきにうんざりする経験はないけれど、自転車の類は乗れないし、雪で道が埋もれるし。何より、もう四年目になるというのに、未だに足を滑らせる。 あの感覚は、どうにも慣れない。 酒井は外部からウチに編入して来た研究生だ。 北海道が初めて、というのなら納得だが… 日本の冬、って言うのは……、日本人じゃない、のか?
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