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この頃寒くなるばかりで、僕はとても憂鬱だった。だから、暖炉で暖まりながら本でも読もうと思っていたのだが、
「は?ユキ?なにそれ」
僕は突然の彼女の来訪に驚き、彼女がおおはしゃぎする『ユキ』という未知の物体が気になった。
「雪だよ、雪!今夜は雪が降るんだよ!ソルはみたことないよね?だったら私と見に行こう!」
うむをいわさず身を乗り出す。雪に興味はあるが、何しろ今日は寒いので僕は断ろうとしたが、
「さ!コート着て!今夜は寒いからね。町の外れに行けば、降ると思うから。」
彼女は壁にかけてあるコートをとり、僕に押し付けた。
「いや、ちょっと、」
「行こー行こー!私のルミエルに乗ればすぐにつくよ!」
ルミエルは彼女のドラゴンだ。名家のお嬢様である彼女は、僕からすれば目が飛び出る程の金額のつくドラゴンに日常的に乗っている。
ルミエルは、余裕で大人数が乗れるほどの大きさをしているが、ルミエルは彼女以外の人をのせることを嫌う。前に、ルミエルがはいた炎で、前髪を少し焦がされたことがあった。
「は!?いや、だから、寒いって!」
扉を開けようとする彼女の腕を掴んだ。
驚いた顔をする彼女。僕は慌てて弁解をする。
「リアは、なんで雪がみたいんだ?今日は、特に寒いし……」
彼女は、腕を掴んだ拍子に床に落ちたコートを僕の肩にかけ、にっこりと微笑んだ。
「ソルは覚えていないだろうけど、昔、あの人がお話をしてくれたの。雪っていう、空から降ってくる白いものがあるんだって。」
彼女、リアの翡翠色の瞳はキラキラと輝いていた。
「……」
「その話をしていたときのあの人の瞳は、すごく輝いてて。いいなぁって思った。だから、ソルと……」
「あの人が、そんなことを…」
リアは僕の目を真っ直ぐと見た。その目は、昔と変わらない目だった。
昔から、この目に僕は弱かった。
「わかった。行こう、リア。」
コートを着ながら、僕は言った。
「!……うん!」
リアは満面の笑みを浮かべた。
僕は、ドアノブにてをかけ、ゆっくりとドアを開けた。
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