0人が本棚に入れています
本棚に追加
「担当の看護師、木村です」
看護師さんって、黒髪、白衣の天使みたいな人が出てくると思ってたけど、そうでもないらしい。
なかなか明るい、ぎりぎり茶色な髪の毛に、エクステバサバサな睫毛。
メイクも結構こくて、ギャルみたいな人だった。
唯一看護師さんらしいのは、何も塗っていない爪くらいか。
マスクをしているから顔全体はみえないけれど、結構可愛い。
「基本的に私が担当ですけど、交代勤務なので私が居ない時は他の看護師が担当します」
看護師の木村さんは、あまり愛想笑いとかはしないタイプのようだった。
そのまま病院の説明とか色々始めたけど、ほとんど笑顔はなく、抑揚のない声で淡々と進めていく。
普段なら多分嫌いになるタイプだけど、今の状況では嘘がない気がして不思議と不信感はわかなかった。
説明の最後に彼女はいった。
「今、自分を傷つけたい気持ちや死にたいと思うことがあると思うけど、入院中はしない約束をしてもらいたいんです。できますか」
「………出来るとはいいません」
出来ない、と言っているのに、彼女はそれでもいいというようにただ、わかりました、とだけ言った。
それが何となく頭から離れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!