第一章 新一

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一般的な写真家は、村に入って村人と信頼関係を築き写真を撮る場合が多い。   そのやり方だと、写真家の力量で良い作品は撮れても個人の導線範囲しか動けないのでシヤッターチャンスは限られると俺は思った。 そこで考えたのが、様々な山岳民俗にカメラを渡し、冠婚葬祭を含む生の生活を撮ってもらう事。 そして作品の出来映えにより、支払う額を設定するのだ。 半年もすれば、きっと素晴らしい作品ができるだろう。 少数民俗を撮るカメラマンはいるが少数民俗自身が撮る写真集って世界中で未だいない。 これを出版社や新聞社に持ち込めば必ず乗ってくる。 確信めいた夢と野心が俺の心に渦まいていた。 そのため日本からフイルム交換が出きるインスタントカメラを30台にフイルムを80本、それに愛機オリンパスのOM1をバックに詰め日本を旅立ったのが1ヶ月前、バンコクの楽宮ホテルに1週間ほど滞在した後、チエンマイ、メーサイを経て10日ほど前にメーサイに着いた。 宿は川沿いにあるメーサイリバーサイドGH(ゲストハウス) 街のメインストリートから離れている事もあり緑に囲まれた静かな場所にある。 構造は竹と木材を組み合わせたバンブーハウス。 竹材がまだわずかしか茶褐色に変色していないとこを見ると、築1~2年てとこだろう? 室内に入るとわずかだが新木の香りがした。 広さは8畳ほどあるだろうか?天井が高いので解放感が増し実寸よりも広く感じられた。 それよりも何よりもありがたい事に、この部屋にはホットシヤワーがついている。 ここは北タイの山岳地帯、朝夜は思ったより寒かった。
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