第一章 新一

8/21
前へ
/55ページ
次へ
次の日の昼前に新一が遊びに来た。 小雨がパラついてるらしく、白いビニール傘を手にしていた。 部屋に入ると室内を見渡し「うわあ、綺麗ですね。プラザとまったく違う」と言って新一はベットの横の籐椅子に腰をかけた。 『だろ、隣空いてるから引っ越して来いよ』と寝袋の上に置いていた紙タバコに火をつけながら誘うと「いやね今度メーフオソンに行くんですよ、そうですねえ、帰って来たら来ようかな」と新一は天井を見上げて頷いた。 「所で伊藤さん、昼飯食べました?」と壁の時計を見て新一は言った。 時計はもうすぐ正午を指すところだった。『いゃ、まだ』と応えると。 「じゃあ、どこか食べに行きませんか?」と新一は言った。 こんな日は道がぬかるんでいて靴底に泥がこびりつくので、できるだけ遠出は控えたかった。  
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加