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「あなた、あっちの子たちと遊ばないの? 同じ学校でしょう」 「遊ばないわよ。くだらないもの、みんな」 「くだらないって、どうして?」 突然、目の前に現れた麻里は、初対面だというのに、さも当然のように遥香の向かいの椅子に座った。その行動に動揺したのを悟られないように、遥香はスマホから目を離さないまま、気だるげな様子を装って、言葉を続けた。 「みんな、話すことが子供っぽすぎるんだよ。昨日のバラエティ番組が面白かったとか、アイドルがカッコいいとか。あとは文房具屋さんで新しい色ペンを買ったとか言って、見せ合いっこして。バカバカしい」 「あら、ずいぶんな言い方ね。あなた、自分はあの子たちとは違う、なんて偉そうに思っているわけ?」 「だって、違うもん。一緒にされたくない」 言った直後、(やばい、今のは感じ悪かったかな)と気が咎めて、遥香はさりげなく麻里の表情を伺った。麻里は少し目を見開いた後、「アッハッハ」と声を上げて笑いだした。 「えっ、ちょっと止めてよ、今の笑うところじゃないし」 さすがに遥香もスマホを置いて抗議した。こっちは真面目に話していたのに、まさか笑われるなんて思わなかった。しかも、クールそうに見えた麻里が、声を上げて笑うなんて。 麻里はひとしきり笑ったあと、呼吸を整え、背筋を伸ばした。再び遥香に向き直ると、 「あなた、ひねくれてるくせに、変なところで素直ね」 と、褒めたのか貶したのか分からないコメントをした。どちらにせよムッとした遥香は 「ひねくれてるのは、あなたのほうでしょ。私なんかに構うなんて。あっちのお仲間のところに行けばいいじゃない」 と言い返した。ところが麻里には何の効果もなかったようで、ニヤッと笑うと、言い放った。 「だって私、遥香ちゃんのこと気に入ったんだもの。私たち似てるのよ。ひねくれ者同士、仲良くしましょう」
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