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他の子たちに馴染めなかった遥香は、麻里と話すしかなかった。遥香と麻里が通う大川クラブは、毎日、平日の夕方に大川町公民館で活動している。活動といっても、大川町周辺の小学生からお年寄りまで、その時間帯に暇な人たちが集まって、世間話をしたり、おのおの好き勝手な遊びに興じるだけであるが。 クラブに来る子供たちは、近隣のいくつかの小学校から集まっていた。みんな、入学してすぐから長い時間を共に過ごし、兄弟のような強い仲間意識で結ばれていた。そんな中で、この春、小学校4年に上がってからクラブに入った遥香は、異質だった。他の子どもたちの輪に、なかなか溶け込めなかった。遥香自身、溶け込もうとしなかったのも一因ではある。年齢より大人びていると自負する遥香は、あんなお子様たちの仲間に入るなんてまっぴらだと思っていた。 そんな新参者の遥香の目からしても、麻里も大川クラブで異質な存在だということは、すぐにわかった。麻里は服装も物腰も、なんとなく上品だった。彼女の周りの空気はいつもピンと張りつめていた。クラブの中では仲良しグループがいくつかできていたが、麻里はどのグループにも属さず、誰とでも満遍なく付き合っていた。
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