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「よせ。大事な客とコトを交える気はねえ」
ステーンは手を上げて制した。
「とりあえず、歓迎しよう。炎熱の惑星へようこそ」
ミルクティは尖塔が何本もつきでた三角屋根の建物に通された。
中は灰色の床と壁に囲まれた空洞のような構造だった。天井が三角屋根の真下まで吹きぬけになっている。部屋に中央に背もたれの高い椅子が置かれていた。
「住民たちが環境に慣れていると思われているが、実際はそれほどでもないのだ」
ステーンは椅子に座ると話し始めた。
彼らは超高温多湿の環境下での生活が常態化しているため、冷却という概念が浸透していない。しかし、近年になってさらに気温の上昇が著しくなると、彼らは冷却剤を服用するようになった。
ステーンたちは服用冷却剤を製造販売をしている。
「早速だが、<雪>とやらを見せてもらえるかな。そんなに低温のものなのか?冷却だけでなく食すこともできると聞いているが」
「<雪蔵>へ案内する。寒くて凍えるかも」
「サムクテ、コゴエルとはどういう意味だ?」
「来ればわかる」
ミルクティは短く答えた。
<雪蔵>は連結車両の全てだった。
密閉された観音開き扉の内側は氷点下に温度管理されていた。
背の何倍もある雪の堆積が青白い光と靄を放ち、凍てついた人工風に粉末状の雪が舞っている。
「サムクテ、コゴエル」とはどういうことか、彼らは理解した。
「経験したことのない冷却だ!」
ステーンは巨体を震わせた。
「こいつはいいもうけ仕事になる。早速だが、外へ運びだそう」
「それはだめだ」
「なぜだめなのだ?」
「雪は熱に弱い。ダインシティの環境ではすぐに溶解してしまう」
ミルクティは傍らのスコップに雪を積むと、外へ出るようにうながした。
貨物車両の外は猛烈な熱波の嵐だった。炎で焼かれるような陽射しが降り注いでいる。
白い結晶は瞬く間に溶けて水になり、湯気を噴き出した。
「雪の正体は水なのだ。惑星マ―キュラソンの上層大気にも水蒸気を含むが、凍結するほど温度が低くならないのだろう。この星は雨が多いのではないか?」
ミルクティは空を見上げた。
「その通りだ。では、どうすればよい?」
「<雪蔵>の建設プラントを置いて行く。組み立てにそんなに時間はかかるまい。建設方法と取扱いの技法も残す」
「それはありがたい。お前は人を探していると言ったな」
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