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「彼女、どう思う?」
八重子を帰し2人になると、小早川は水島に聞いた。
「渡した書類にも細かく書いていて、几帳面で真面目な印象だな。契約書の字もきれいだ。君との会話でも、質問されたことについて、簡潔に的確な答えを返しているようだった。頭の回転も速そうだ。
ちょっと堅い感じはしたが、会社でも仕事はできる方じゃないか。大手化粧品メーカーの研究所なんて、競争率も高そうだし、そうそう行けるところでもないだろう。院卒で30歳、ということは入社6年目か。新人を抜け出して、これから本格的に仕事に取り組む時期じゃないか。辞めるのはもったいないね」
「僕もそう思ったよ。ただ、恵まれた環境で、自分の専門ど真ん中の仕事ができるっていうのに、さほどやりがいを感じているようでもなさそうだった。あと気になったのは、人間関係の悩みかな。それほど深刻そうには聞こえなかった」
「そう?」
「これは今後、探っていくとしよう。彼女の経歴と大まかな性格はつかめた。よし、次の段階に行こうか」
何をするのか、水島は検討もつかなかった。ここでの本格的な仕事は初めてだったのだ。
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