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小早川が会社に来ていることを、八重子は知らない。おそらく大丈夫だろうが、小早川は念のために軽い変装をしていた。
伊達眼鏡をかけて、髪型も金融機関の営業マンかと思うような雰囲気。いつものカジュアルめのトラッドスタイルに比べると、堅い印象だ。
小早川は、八重子よりさらに早い8時には会社に行き、休憩室の窓から外を見ていた。しばらくすると、八重子が道を歩いて来るのが見えた。数十メートル後方には水島の姿もあった。
よしよし、しっかり仕事をしているようだ。八重子が建物に入るのを確認すると、水島も間もなくやって来た。水島は玄関を通過する時にちらりと建物を見上げ、窓際に立っていた小早川と目を合わせた。直後、小早川のスマホに「あとは宜しく。オレは次の調査に向かう」とのメッセージが入った。「了解」と返信し、小早川も窓に背を向けて歩き出した。
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