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駅の公衆トイレで仮装メイクする麻衣と優奈を迷惑そうに見る婦人が出ていき、次に入ってきた黒ずくめの服装の若い女は二人をチラリと見たあと個室に入る。 思い描いていた傷メイクには程遠い出来ばえだったが、赤いゴミが貼り付いているだけにも見える、ただれた皮膚のメイクを施した麻衣が「すごくない?本物っぽい」と喜んでいたので優奈も自分のメイクを切り上げ二人で公衆トイレを後にした。 スクランブル交差点に出ると、台風が近づいている影響か風が強く、傘を差すほどではないが霧のような雨が降り続いている。それでも週末の渋谷はたくさんの仮装した人たちで溢れかえっていた。 「マジで雨つら」 「さむ!」 悲観的な言葉とは裏腹に、麻衣と優奈は高揚し、笑いながら交差点を渡り終え行く宛もなくジグザグとうろつく。 「写真撮ろ」と麻衣が言い、ファミリーマートの前で立ち止まり、スマホのレンズを自分達に向ける。麻衣のスマホにはミッキーマウスのイヤホンジャックがささっていて、優奈はそれをダサいと思ったが言わなかった。 「インスタとTwitterあげていい?」 スマホについた雨の滴を拭きながら、麻衣が慣れた手つきで写真をネットにアップする。 「これはあたし史上最高のファボ数になるかもしれない」 麻衣が自慢げに言う。 「あぁねー」優奈の返事はそっけない。 「見て」 麻衣がスマホの画面を差し出す。     
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