0人が本棚に入れています
本棚に追加
『いただきます』
「いっただっきまーす!」
家族の声が重なる。
よっぽど嬉しいのか弟だけめちゃくちゃ元気に大声で、隣に座っている私としては耳栓が欲しいくらいだった。
耳がキーンとする。
弟の希望によりエアコンでがんがんに部屋を暖めて、こたつで晩ご飯だ。
部屋の中は南国みたいに暖かい。
机の上には、美味しそうなおでん鍋がほかほかと湯気を上げている。
父、母、おばあちゃん、弟が一斉に鍋へと手を伸ばす。
もちろん私も。
いつもの食事風景、と思いきや父が口を開いた。
「テーブルじゃなくて、こたつで夕食なんて珍しいじゃないか。というか、お前、なんでドテラなんか着てるんだ? いや、それ以前に部屋の中ではそのニット帽とマフラー取れよ。変なやつだな」
父が、不思議そうな顔で弟を見ている。
ツッコミを入れたくなるのはわかる。
「そのドテラ懐かしいでしょ。あたしのタンスにしまってあったのよ。この子がどうしても着たいって言うからねぇ」
おばあちゃんがのんびりと答える。
フリースのジャケットを着込んだ私は、ほくほく気分でおでんをつついている。
いやあ、久しぶりのおでんは美味しい。
最初のコメントを投稿しよう!