第1章

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 僕らみたいなAIが発達するにつれて、低所得者層の働き口も減った。いや、実は高所得者層の働き口も減ってるんだけどさ、金融マンの数とか、医者さえも減ってるし。ともかく、僕らの仲間が彼ら、人間の働きを阻害してるらしい。そのため、反知性主義というか、反科学主義なる思想が生まれた。多くはその国の文化というか宗教と結び付いた者達だが、そのほとんどは低所得者層、僕らに仕事を奪われた者達だ。  警備の交通誘導や施設管理は機械が完全に行えるようになり、シール張りなど単純作業も機械が簡単に行い、その他に皿洗いや料理、ものを売る店員の仕事も、ロボットの値段が安くなるにつれて、企業は導入しはじめ、ただでさえ人の手が足りない仕事、介護などは大いに助かったが、同時にそこで働いていた人たちは仕事をなくした。  一人や二人じゃない、何万、何十万と職を失った。  そのほとんどは生活保護になることすら許されず、毎日の暮らしを苦しめられている。  昔は、平均年収は四百万だったか。それが今じゃ、二百万、百万となり、そういった低所得者が最近までは少数派だと思われていたが、気がついたらそれが大多数だと気づき、日本という国はようやく、己が困窮してるのに気づいた。  いや、困窮してるのは日本だけじゃない、他はもっとひどいらしい。彼らの嘆きをどこかに反らさなきゃいけないため、見せかけの愛国心でごまかすことも多いらしいが、この国もやっていたが、最近ではそれもできなくなり、今じゃ各種企業や政治家に対し、過激なことをする輩も少なくない、らしい。  ほんとは、詳しくは知らない。  だって、それは遠い世界の話だし。ここではない世界、ここじゃない世界のことだ。いくら、そこからお客が来るとはいえ、僕らには難しい話である。  だから、これは断片的に知ったものから推測した、イメージだ。あくまで、イメージ。もしかしたら、僕が思ってるよりも世界は平和かもしれないし、もっと地獄かもしれない。 「この前、新聞見たら、またテロが起きたって。大変だね、人間さん達は。私には分からないけどさ。仕事がないなんて。私らは、最低限仕事だけはあるから」  外の新聞データはこちらでも閲覧できる。  こたつでぬくぬくしてるイスカはいう。
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