第1章

6/8
前へ
/8ページ
次へ
 あの遺跡のライオン入り口から遺跡ダンジョンに入ると、一定間隔で飾られた松明以外は何もない薄暗い廊下となり、歩いていると、落書きやらこたつやらが置かれている。 「ユーリ……雰囲気ゼロだね」 「ほんとは、某有名ゲームのように謎解きを重視した、場所だったらしいけどね。ダンジョンの攻略なんてとっくに、一瞬で暴かれる時代になったから、誰もその偉大さを実感しなかったね」 「哀れだ。やっぱりさ、私は思うんだけど。もっと美少女を増やせばよかったんだよ。私みたいな」 「あ、うん。イスカが美少女なのは認めるけど。自分でいう傲慢さは、どうなんだい」 「そこでためらって、い、いえ、私は美少女じゃないんです、という美少女の方が性格やばくない? だから、私は言わない。むしろ、美少女なのを認めるのだ!」  と、大して胸のないイスカは胸をはった。  ドヤッ、と顔は鼻息たてている。  いや、ドヤッて。ドヤッて、きみさ。  ま、それはともかくとして。 「何か、あんたの心の中でひどいこといわれてない。私」 「気のせいだよ、イスカ」  僕らはてくてくと遺跡を歩いていく。  ほんとなら、アクションRPGなので、モンスターと戦闘する、エンカウントするはずだが、てくてく歩いても彼等は襲って来ない。僕らは仕事上、透明になるモードで進められるのだ。念のためにステータスは高くされているが、律儀に敵と戦ってダンジョンを進んでいては、閉園までに情報は集められない。  だから、僕らはモンスターが闊歩する広場を素通りし、平然と奥へ進んでいく。 「鬼のようなモンスターがうじゃうじゃいるとこでも、こたつ遺跡あったね」 「上級者には、大したモンスターじゃないからね。こたつでぬくぬくする余裕もあるのかも。でも、そういったプレイヤー達もすぐに飽きて、他に行っちゃったね」 「やっぱり、私みたいな美少女が足りなかったか」 「それならいっそ、美少女だらけの十八禁VRでいいと思うよ」  ちなみに、VRで主流なのはエロゲーだったりする。  ぶっちゃけると、VRはあまりにもリアリティがありすぎるゆえに、運動嫌いなゲーマーに運動を求めるような矛盾となってしまい、リアルすぎる戦場ゲームも出されたが、あれ、PTSDが続出して即閉園となったな。いや、出す前に誰か気付かなかったのかな、あれ。人間はよく分からない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加