第1章

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 で、そんなVR事情で何が売れてるのかというと、エロいゲームだったりする。これは、リアリティがいくらあっても足りない。ま、それでも売れてるのはリアルの画像より、アニメよりの、デフォルメされた画像というかキャラクターらしいのだが。そこで、エッチなこと散々やるのが大流行となってるようだ。  これで、ジェンダー論による抗争が激しくなり、こっちもまた炎上がすさまじい。  遺跡の調査が終わると、今度は雪山ステージや火山、このゲーム世界のありとあらゆる場所を探索する。 「あ、見て見て、ユーリ。これ、初々しくて素敵じゃない?」 「え」  海の底のダンジョンで、僕らは泡に包まれながら海中ダンジョンを探索していたときだ。こんなとこにも、こたつ遺跡はある。海の奥深くなら、気圧で変形だとか腐るだとか色々考えられるが、そこまではゲームは忠実にしない、こたつは新品同様のまま、沈没船のダンジョンで、船長室のど真ん中に置いてあった。  こたつの台には、ハートマークが上に描かれた相合い傘が描かれている。その下にはプレイヤーの本名らしいのが書かれてる。 「ラブラブなんだねー、この二人。えへへ」  自分のことのように、うれしそうにするイスカ。  僕は、自分のことのようにはなれなかった。  だが、イスカが喜ぶ姿は好きだ。だから、それで僕もうれしくなった。  でも、悲しくもあった。 「この人達にはまだ明日があるのに。私たちの明日は、限りがあるんだね」 「そうだね」  僕らの明日には限りがある。  いや、こんだけラブラブなカップルプレイヤーも、現実世界では全く縁がないのかもしれないが。もしくは、とっくに別れてるかもしれないけどさ。  でも、やっぱり悔しいな。 「私達はまだ、なにも始まってないのに。ろくに始まってないのに。彼らにはまだ、始まりがあるんだよね。まだ、終わりじゃない」 「そうだね」 「でも、私たちはもうすぐ終わる」  しかも、悲しいことに僕らの仕事は彼らの残したものを集めるということだ。調べるということだ。これは、誰かが捨てた残飯を貪り食らう野良犬と変わらない。  始まったばかりだというのに、僕らの世界はとっくに終わっていて。だから、ほとんど誰もいなくなった世界で生きようとするには、過去にすがるしかなかった。  誰かが残した、思い出にすがるしかない。  だが、そんな仕事もいつかは終わる。  そう、遠くない未来だ。
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