帰り

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帰り

朝はあんなに晴れていたのに午後からは徐々に雲が広がってきて、部活が終わって帰る頃には細かい雪がしきりに降り落ちていた。 細かい雪も気温の低い証拠。 明日も今日ほどでなくても冷えるのかもしれない。 俺のココロも冷えきってる。 また監督に叱られて、小テストは散々。 浩輝ともまだ微妙な距離。 「さぶっ」 ぶるっと一つ身震い。 不意に前を歩く女子に目が行く。 あれ? また田中だった。 へえ、こんな時間に帰るなんて何か部活でもやってんのか。 同じクラスなのに彼女の事は何も知らない。 会話すらしたことはなかった。 今朝のキーホルダーは無事に持ち主の手元に戻ったかな。 交差点。 赤信号に立ち止まる彼女。 俺はその二メートル後ろに立つ。 「ぁ……。何で毎回……。全くっ……」 彼女がため息混じりに独り言を呟く。 その言葉からも苛つきが伝わってくる。 ? おとなしい奴と思ってたけど、違うのか? 突然何を怒っているのか……。 信号が変わり、その理由が分かった。
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