帰り

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横断歩道の真ん中に屈み込んで何かを拾う。 手に持つのはファーのマフラー。 そんな目立つもの落とす奴いるか? それをパンパンと叩いて雪をほろい落とす。 きっと数台の車に何度かひかれてしまったのだろう。 ……それにしても。 ぶっと思わず吹き出した。 その拾ったマフラーを電柱の棒に引っ掛けようと悪戦苦闘している彼女。 背が小さいから中々届かないらしい。 俺の吹き出した笑いに恨めしそうな表情をして彼女が振り返る。 「……何よ」 「貸してみ」 そのマフラーをするりと取ると、さっと掛けた。 「……ありがと」 「お前、背が低いから見付けるのかな……」 「え?」 「朝も、拾ってたろ?キーホルダー。イルカの」 瞠目する彼女に一瞬、ドキリとする。 「……そうかも。私よく物拾うのよ。何でいつもいつも私の前にばっかり……」 「違うだろ?他の奴はどうでも良いと思う物をお前は誰かの大切な物って思うから拾うんじゃないのか?良いんじゃない?そういうの」 「……別にそんな訳じゃ。ただ可哀想だから……」 「ああ、持ち主が」 「違う、物が」 言って失敗したと背けているその顔が照れているのが伝わる。 物がって……何だよ、それ。
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