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くくっと堪えきれずに笑いが漏れ出た。
「……何よ。だって、持ち主の元に戻らなかったらゴミになっちゃうのよ。そんなの可哀想でしょ」
可哀想なんて、まるで物にも感情が有るように言う彼女。
いじけたように唇を尖らす。
こいつ……。
今まで他の奴らと壁があって良かったと思う。
俺だけが見付けた、こいつの可愛さ。
「なあ、 田中ってさ……好きな奴いんの?」
「ぇっ?」
弾かれたように俺に戻ってくる視線。
見上げた瞳が寒さで潤んでいる。
頬が赤いのも寒さのせいか?
頭のてっぺんには雪が積もり始めていた。
好きな食いもんは?
好きな音楽は?
休みの日は何してんの?
もっと、知りたい……。
さっきまで憂鬱だった俺のココロも、彼女に拾われて軽くなった。
明日からは少しだけ学校に行くのが楽しみかもと期待感が顔を出す。
これが恋というものかと、思わず口元が緩くなるそんな粉雪の舞う夜だった。
了
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