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「智君、大丈夫? 傷を見せて」
優花の問いかけに智はズボンの裾をたくしあげ傷を見た。
脹脛の肉を大きく噛み千切られている。
簡易の救急箱を開け、優花が傷の手当てを始める。
傷の手当てをしてくれている優花に智は声をかけた。
「ごめんよ、優花。
ここから先は1人で行ってくれ」
「嫌!
私は最後まで智君と一緒だよ」
「でも、それじゃ…………」
「好いの、智君と一緒なら」
「ごめん、ごめんな。
俺の我が儘でこんな所に連れて来てしまって」
冬の氷河を見たいとの思いから、夏真っ盛りの日本から厳冬の南米に来たのが2週間前。
日本に比べて治安が悪い国なので、銃器の所持免許を持っていたガイドと交渉して、この国を離れるとき購入した銃をガイドに譲る約束で、リボルバー2丁と弾丸を護身用に購入。
国際空港のある首都から南下して3日目の朝、俺と優花が寝ている部屋にガイドが飛び込んで来て、世界中で起こっている異変を知らされる。
混乱する地方都市を車で脱出し、最寄りの軍の駐屯地に逃げ込む。
駐屯地より数百キロ南にある海軍の軍港を目指して、多数の将兵や大勢の避難民と共に移動を開始して10日目の昨日、数万体以上のゾンビの群れと遭遇して避難民の集団は散り散りになり、この時ガイドとも離れ離れになる。
一緒にいた警察官と共に近くにあった小屋に逃げ込み、息を潜めゾンビがいなくなるのを待つ事にするが、逃げ込む際警察官が噛まれた。
警察官は数時間、自分の持つ自動拳銃を見つめたあと自分の頭を撃ち抜く。
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