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「……参ったな、こういうバレ方は初めてだ」
「誰にも言いませんよ」
「嫌なこと言ったのに、よく助ける気になったね」
「あの件に関しては、私が悪いんですから」
いつの間にか口調が崩れているアオイを見て、好ましいと思う。好きだ、じゃなくて、好ましい。詭弁かもしれないけど、その言い方がしっくりくる。
「律子さんに借りができてしまった」
事実を深刻な様子で読み上げるニュースキャスターの口調でアオイは言った。
「借りってほどでもないですよ、ただのお節介だったし」
「五万」
何の数字だろう、と私は考えてから口にする。
「もしかして今、カツアゲされそうになってた金額ですか?」
「うん。単純計算で腹に五十発食らった分の稼ぎだったんだ」
今度は私が言葉を失う番だった。五十発。尋常じゃないと、アオイと関わる前に感じていた震えがよみがえる。そんな暴力の嵐を受けて、それを糧にして生きている人が目の前にいるのを信じることができない。
「だからさ、結構でかい借りなんだよ。五万って」
そしてアオイは控えめに笑って言ったのだ。
「なんかできること、ない?」
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