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こたつのおっさん
我輩はこたつである。
「ゆうくん、アイスとってきて」
「は? やだよ」
そして我輩で暖を取っているこの二人は姉弟である。
姉は美鶴、弟は優一。ゆうくんなどと呼んではいてもこの二人、別に仲良しではない。
特にゆうくんの方は、三つ年上の姉に対して反発する気持ちが強いようだ。幼い頃はお姉ちゃんお姉ちゃんと呼び慕い、仲良く過ごしていたというのに……時と流れとは残酷なものだ。
美鶴も我輩と同じ感傷を抱いているのか、深いため息をつく。
「お姉ちゃんがお願いしてるんだよー?」
「お願いじゃねぇし」
「ゆうくんはアイス食べたくないのー?」
「ねぇよ。一人で食ってデブってろババア」
あ、あかんぞゆうくん。美鶴さん怒ったぞ。
「……ゆうくん、《こたつのおっさん》って知ってる?」
「はぁ?」
不穏な空気を感じ取ったのだろう。スマホから顔をあげたゆうくん。しかし美鶴さんは彼に見向きもせず、うつろな表情でテレビのバラエティ番組を見ている。
「《こたつのおっさん》それは、こたつに囚われしおっさん」
「なに言ってんの?」
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