134人が本棚に入れています
本棚に追加
「このこたつ、いよいよダメになったな。全然暖まらない」
夫の悟がリビングの隣にある和室から声を掛けてきた。
「そうですね。もう20年も使っているものね」
あのこたつを買ったのは、確か次女の春香が生まれた年だった。
その春香もこの3月で短大卒業だ。月日が流れるのは早い。
「じゃあ、処分だな」
「……そうですね」
私は食器棚に並んでいる自分のマグカップや、気に入っているグラスをいくつか選びながら、キッチンカウンターへ置いて行った。
襖の開いた和室からは、悟がこたつ布団を剥がしているのが見えた。
ダメになったから処分する。
私と同じなのかもしれない……。
最初のコメントを投稿しよう!