プロローグ

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 「このこたつ、いよいよダメになったな。全然暖まらない」  夫の(さとる)がリビングの隣にある和室から声を掛けてきた。 「そうですね。もう20年も使っているものね」  あのこたつを買ったのは、確か次女の春香が生まれた年だった。  その春香もこの3月で短大卒業だ。月日が流れるのは早い。 「じゃあ、処分だな」 「……そうですね」  私は食器棚に並んでいる自分のマグカップや、気に入っているグラスをいくつか選びながら、キッチンカウンターへ置いて行った。  襖の開いた和室からは、悟がこたつ布団を()がしているのが見えた。  ダメになったから処分する。  私と同じなのかもしれない……。
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