115人が本棚に入れています
本棚に追加
銃弾を食らった男の左胸から血が噴き出し、森を覆う暗闇を紅く染める。すぐ近くでは、人々が歓声を上げていた。誰も銃声には気づいていない。
そのまま後ろに倒れた男に寄って行った女は、呼吸を確認した。息は、ない。背負っていたリュックサックから太いロープを取り出し、男の腰に巻き付けると、女はそれを引っ張った。その女は、力がめっぽう強い。死体とはいえ、中肉中背の男ひとりを引きずることなど、朝飯前だった。
やわらかい土の感触をスニーカー越しに感じながら、十数メートルほど進む。あらかじめ掘っておいた穴まで来ると、ロープをほどき、無造作に男を落とした。ほどいたロープも中に落とし、一応、上から土や葉っぱで隠したが、遺体が見つかろうが見つかるまいが、女にはどうでも良いことだった。
最初のコメントを投稿しよう!