殺しは記憶と引き換えに

1話

私刑後に唯加が依頼人に会うことは、ほとんどないといっていい。

だから、こうして近藤の姿を見ることが新鮮だった。

「娘の記憶」を無くした近藤に何かしらの変化は起きているのだろうか。

ほんの少し気になったが、思いを馳せるのはやめた。

信号が青に変わったし、ダラダラと汗を流すオヤジと二人でまたカラオケボックスに籠るのは御免だ。