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 あのあと、エレインを屋敷において、ランスは馬車で路地に戻った。  男を農場に運びこんで、片隅に埋めた。  埋める前に念のためにと胸に杭をうつと、男の喉はうなり、血泡をふいた。生きていたのか、それとも、新たな生を得て起きあがりかけていたのか、わからなかった。どちらでもよかった。  何度も槌をおろした。太い杭が貫通した。地面に刺さって、とまる。肩で息をして、おろした手は濡れていた。べたつく手を、土で洗い、払う。  この血が穢した。よみがえらせるものか。あのひととおなじ時を生きるなど、許さない。  自分には、叶わないのに──  涙が伝っていた。ランスは啼いた。真夜中の農場に声が響いた。もう少年のものではない、低い、男の声だった。  そうだ、隣にいたいのだ。ネヴィル卿のように屋敷や財産を残すことはできない。ただ、長くて数十年間傍にいて血を抜きつづけ、先に老い、死んでいく。  化け物と言うにはあまりにもかよわいエレインをこの世におきざりにして。  だから、せめて、隣に立ちたい。  握りしめていたシーツを手放し、気持ちを切り替える。そうしてやっと、自分が莫迦なことを言って主を寝室から追いだしたのだと気がついた。  道具も持たずに、何がベッドメイクだ。  階段を駆けおりた。空のアイロンを手に、居間のドアを細くひらく。  火のついた炭をいくつかアイロンに拾い入れたところで、煙突からふきおりてくる冷気に指がふれた。さいわい火に影響はないが、一瞬とはいえ、暖炉の熱をさえぎるとは。外はかなりの寒さらしい。通気口を一段階せばめる。  エレインは窓辺にはりついていた。ちらりとこちらのようすに目をやって、すぐに外にむきなおる。  真っ暗闇を見て何が楽しいのだろうと、うしろからのぞきこみ、ランスはあ、と声をもらした。  窓の外、白いものが舞っていた。
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