日葵

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悠太が所属しているチームはプロの下部組織。そのチームが天皇杯の決勝へ進出した。観戦に行くのは強制ではないが、理由もなく欠席することはありえなかった。 「マフラーもそう。いくらするか日葵はわかってるでしょ? 悠太がお年玉要らないって言って買ったんだよ」 「悠太は欲しいモノなんていつでも買ってもらえるからでしょ? また靴買ってもらったの知ってるんだからね」 「それはスパイクでしょ。サッカーで必要なの」 今年に入って悠太が買ってもらったスパイクは一足だけじゃなかった。土のグラウンドで使うスパイク、芝生で使う用のスパイク、雨の日用のスパイク、練習用のトレーニングシューズ。当然、普通の靴とは違って消耗は激しい。穴が開く前に、靴底のポイントがすり減るだけで買い替えなければならない。足も大きくなれば買い替える。去年は普段履くための靴も加えれば、日葵の知る限り8足は買ってもらっていた。 それと比べて、日葵が去年買った靴はたったの3足。自分のお年玉で買ったシスタージェニーのパンプスと雨の日用の長靴。そして、上履きだった。 「そうだね。悠太は才能があるもんね。私は無能だから我慢するしかないもんね」 バレエ、ピアノ、水泳、テニス。これまで日葵がやってきた習い事。すべて母がやりたくても、出来なかったもの。日葵の意志とは無関係に母の勧めで始めて、母の期待を裏切って来た。中でもピアノに関しては、お金をかけた分、母の思い入れも強かった。 ママがパパを説得して、購入したのがグランドピアノだった。置き場所は一階の客間。テーブルと4人掛けソファーがあって、その向かいにインテリア用のガラス扉の棚があって、角にテレビがあった。それが一軒家を購入したときに計画した配置。 そこへ割って入って来たのがグランドピアノ。玄関からいれることが出来ずにクレーンを使って庭の窓から入れた。お客を迎え入れる目的の部屋がピアノのレッスン場所に変わった。訪問するのは講師の先生だけになった。
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