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「……。ごめんなさいね」
厚意に甘えて砂介の背に腰を掛ける。そうしている間にもタコやエビ、イカ、ニシガイにカキ、ハマチとマナガツオ、ナシフグにビングシといった魚介類がふわりふわりと宙を泳いでいる。
しかしここは海の中ではない。息も確かにできている。そよ風が吹いて頬をなでる。その風に乗るかのように、魚介類が宙を泳ぐ。人々はそれが当たり前のようで、何とも思わずに、見向きもしない。
たまに間抜けな魚がこつんと人に当たるが、気まずそうに慌てて逃げ。人はそれを微笑んで見送る。
なんとも摩訶不思議な光景だ。これが夢でなくて何であろう。
「ここで立ち話をするわけにもならぬであろうから、内裏(だいり)へゆくか」
「内裏!」
乙姫さまなる女性の言葉に仰天し、思わず大声が出てしまい。砂介もつられて「わっ」と声を出し、身体を揺らし。通はあやうくこけそうになった。
周囲を見れば、何度となく平城京のようなと言ってしまうだけあり。唐風の建物や五重塔も見えるが。今いる、朱雀門から通る広い大通りの向こうに宮殿らしき建物が見える。大極殿(だいごくでん)といおうか。宮城の中にまた宮城があるようなおもむきがあった。
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