いじわる眼鏡

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イライラと携帯灰皿で煙草を消すと、右手を開いて覆うように、アンダーリムの眼鏡をくいっと一貴はあげた。 きらりとレンズが光って一貴の表情はわからない。 だからあのとき一貴が、どんな気持ちで私と付き合う気になったのか、いまだにわからなかった。 今日こそ、一貴に本当の気持ちを聞こうと思った。 でも、一貴の顔を目の前にすると、言えなくなる。 「だから、なに?」 ちっ、舌打ちした一貴に、椅子の上で飛び上がりそうになる。 怒鳴られるのかと身構えたが、一貴は眼鏡を外すと、イライラと服の裾でレンズを拭いた。 「なんでさっきから黙ってんの?」 再び眼鏡をかけた一貴の眉間にしわが寄る。 おかげで、さらになにも言えなくなった。 じわじわと涙が滲んでくる。 俯いて黙ってしまった私に、一貴がちっとまた舌打ちした。 「……泣くな」
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