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あれはクリスマスの翌日だったか。楽しいクリスマスを過ごせて幸せな気分で街を歩いているとひかるが女の子と歩いてくるのが見えた。妹さんかな、と一度思った。けれどひかるに妹はいない。何度か家にお邪魔したことがあるけれど、お姉ちゃんもいない。若い女の子の気配が全くなかった。そして妹や姉にしてはえらく親しげだった。
「いつ?」
「クリスマスの翌日なんだけど」
ひかるの目が左上へと動いた。左上を見るとき人は嘘をついているという。
「……従妹だ」
従妹まではさすがに把握していない。ただ嘘だと思った。
「そっか」
わたしは次になにをいうべきか考えた。「従妹なら仕方ないか」
「ああ、仕方ない」
わたしはひかるの手を握った。クリスマスの次の日の件についてはひとまず置いておく。あとでまた訊こう。馬鹿な女だと思われないようにしないといけない。わたしが馬鹿でちょろいことくらい自分でわかっている。喧嘩しても花でももらえば嬉しくて喧嘩していたことを忘れてしまう。中学生のときの彼氏にもいわれた。だからひかるにはそう思われないようにしたい。でないとまた浮気されてしまう。
いや、もうされているのかな?
「じゃあ、女の子とホテルに入っていくところを見たって麻里がいっていたのはなんだと思う? 見間違い?」
「証拠でもあるのか」
これについては険しい口調でいった。断固として否定する様子だ。
「証拠はないけど、でも、証拠でもあるのかってそれ犯人のセリフだよ」
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