馬鹿な女

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馬鹿な女

 別れたいの、とわたしはいった。涙がこぼれそうになるのをどうにか我慢する。 「どうして」ひかるは問う。  わたしたちは学校の図書館にいる。うちの高校は図書館に掘りごたつがあって、あまり人が来ない。わたしたちのお気に入りの場所だった。冬はこたつにもぐり、二人で話してから家に帰るこが多かった。わたしが誕生日に告白して付き合い始めてもうすぐ一年だ。その間、夏であっても学校内でひかると過ごすのにこの布団のない掘りごたつをよく利用した。ほかに生徒が来ることもあるが、比較的少なかった。図書館に来る習慣がある生徒がそもそも少ない。とはいえ秘密のスポットとして密談が交わされることも多いと聞く。わたしは別れ話にはこの場所が持ってこいだと考えた。  どうして、の問いにわたしは答える。「ひかる、浮気してるよね」 「してない」  目は泳がないが、いつも冷静なひかるだ。わたしに浮気を問い詰められたくらいで目を逸らしたり手を震わせたりするとは思わなかった。 「麻里が見たっていってたんだよね。ひかるが女の子とホテルに入ってくところを。わたしも女の子とデートしてるのを一回見た」     
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