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特別読み切り 19秒だけ勇者
かつて人類は絶滅の危機に貧していた。
大陸を支配する魔王と、その手下である魔族。
魔王に支配はされずに、群れ単位で生きる魔獣たち。
その両者の脅威に晒され続け、正に滅びる寸前にまで追い詰められた。
だが一人の英雄の出現に、人類は希望の光を垣間見る事となる。
彼の剣技は凶悪な魔獣を、大魔法は狡猾な魔族を、放つ言葉は人々を大いに奮い立たせた。
そしていつしか、大陸の過半部分を取り戻し、未曾有の危機より人々は救われたのだ。
だが、英雄もあくまで人の子。
天命にだけは逆らえなかった。
勇者と称えられた英雄もやがて老い、代替わりをし、また老いていく。
そして500年の時が過ぎた頃には9代目となっていた。
大陸の勢力図は初代のものそのままに……。
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大陸北部に『眠らずの森』と恐れられる森がある。
魔獣が多数生息し、昼も夜も気を抜けない事が由来だ。
その危険地帯の真っ只中に若い男女の二人が居た。
噂に違わぬ程に魔獣は多く、彼らは連戦を強いられているのであった。
「ドラゴンブロー……ぅ」
寝ぼけ半分の声で魔法が唱えられた。
魔術師リーザのものである。
その声色とは裏腹に、数多の魔獣が瞬時に粉微塵となる。
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