特別読み切り  19秒だけ勇者

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こんな芸当が出来る人物は、大陸中探し回っても極少数だ。 一見すると唯の眠たげな少女であるが、規格外の力を有している 「マリウス、こっちは片付いた」 「じゃあ助けてくれよ。こいつの相手は手に余る!」 剣をがむしゃらに振り回しているのは、勇者マリウスだ。 相対するはモチウサギ。 その性質はというと、モチモチしてて可愛い。 機嫌が悪いと人を噛む、以上。 「がんばって。ふぁいとー。ウサギなら村人でも倒せるんだよー」 「んなこと言ったってな、こうも早く動かれちゃあ……!」 「キュウッ!?」 「やった! 当たったぞ!」 当たったのは刃ではなく、マリウスの肘だった。 モチウサギが飛びかかってきた瞬間に当たり、それがカウンター気味にヒットしたのだ。 我らが勇者様の大勝利である。 「ウサギ相手に楽しかった? 存分に癒された?」 「うるせぇ。オレはド素人なんだから多目に見ろ」 「そうだね。ちょっと前まで羊相手にしてた人だもんね」 「おっ? 畜産をバカにしたか? もう二度とミルクとチーズ口にすんなよ」 勇者の末裔も9代目となれば相当な人数となる。 その中でも、力や資産を引き継いでいるのは直系の家のみ。 家系図の端に乗るかも怪しいマリウスにはろくな力も、高名な装備も、使命すらも引き継がれない。     
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