特別読み切り  19秒だけ勇者

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……ハズであった。 彼の才能がある日突然に謎の発芽をし、その暮らしぶりを一変させた。 一日に19秒だけ勇者の力を振るう事ができるのだ。 もちろんそれ以外の時間は、一般人と変わらない。 恐ろしく極端な人間兵器が生まれた瞬間だった。 「早く次の村へ行こう。食料袋がもう空っぽ」 「食料袋? お菓子袋の間違いだろ! 金の許す限り買い漁りやがって」 「じゃがじゃが君は神のお菓子。あれだけで私は永遠に生きていける」 「テメェの偏食に付き合わされるオレの身にもなれ、クソが」 森の中には中規模の村があった。 古くに開拓された所で、防備も万全、騎士団も常駐している拠点であった。 魔獣であれば騎士団で対応でき、魔族は境界線から遠いために侵入してくることはない。 よって安全な村である。 そう思われていたのだが……。 「グワッハッハ! このガキの命は貰ったぁ!」 「おとうさーん、おとうさーん!」 「も、者共! かかれぇ!」 「煩いハエどもが、寝ていろ!」 「うわぁぁあーッ!」 その村でミドルデーモンが暴れていた。 人間の2倍はあろうかという巨体が、少女を片手で拘束している。 騎士団も果敢に攻めるが歯が立たない。 瞬く間に薙ぎ払われ、場はすぐに制圧されてしまった。     
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