特別読み切り  19秒だけ勇者

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このまま少女の命は、暴風の前に散ってしまうのであろうか。 駆けつけたマリウスたちは、この切迫した状況を即座に理解した。 「マリウス。困ってる。助けよう」 「バカ言え。こんな化け物相手にナマクラでやりあえるかよ!」 国からの期待度が極めて低いマリウスには、支援はほとんどない。 彼が持参した武器はひどく粗末であり、刀身は錆びている部分の方が多いという有り様である。 「グワッハッハ! ワシを葬れる程の武器となれば、近くの森に封じられた『退魔の剣』のみ! それさえあれば一振りで撃退できるものを!」 「おい、何でアイツは唐突に攻略法を語りだした?」 「さあ。最初の村だからじゃない?」 「いやいやいや。こっちの事情なんか敵には関係ない……」 「退魔の剣と言えば……伝説の勇者様が使われた事もある名剣!」 「かつての勇者様が片道4秒で現地に向かい、7秒で引き抜いて帰ってきたという、あの剣の事か?!」 「今度は村人まで合わせてきたぞ?!」 「ルーキーに優しい。正直助かる」 マリウスが全力で向かったとして、15秒後には戻ってくることが可能。 通常であれば気にかける事は無いのだが、彼に限っては違う。 「リーザも知ってんだろ、オレが19秒しか力を使えないことを!」     
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