特別読み切り  19秒だけ勇者

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「戦闘に4秒も割けるじゃん。余裕ヨユー」 「それは最短でやれた場合だろ? しかも4秒かそこらで高位の魔族を倒すなんて……」 「グワッハッハ、退魔の剣があれば、ワシを倒すのに3秒とかからんだろうな!」 「アンタちょっと黙っててくんない?!」 トータル18秒。 全てを順調にこなしたならば、マリウスは村を救うことが出来る。 些細なミスすら許されないが。 そのプレッシャーが彼の決断を鈍らせていた。 「待てよ。その剣を抜く瞬間だけ力を使えばいいだろ。そうすりゃ戦闘に10秒くらいかけられる」 「グフフ。この少女を喰らってしまおう。あと30秒後には丸呑みしてくれるわ!」 「おとうさーん助けてー! 私の命は残り30秒よー!」 「あぁ、こんな時に伝説の勇者様が! 20秒足らずで助けてくれる勇者様が居たならば!」 「わかった、わかったよ! 行けばいいんだろクソどもがッ!」 爆風、そして土煙。 力を解放したマリウスは風よりも早く駆け抜けた。 こうなってしまえば乱雑に自生する木々も、群れを為す魔獣たちも障害にすらならない。 行きに少し迷い4、7秒。 力任せに剣を引っこ抜くのに6、5秒。 帰りはさらにスピードを加速させて3、9秒。 見事マリウスは15、1秒という好タイムで舞い戻ってきた。     
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