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◆進也の性格とドライブと・・・
進也は店を出ると、いつもなら真っ直ぐに帰宅する。しかし、今夜は少し寄り道したい気分だった。店から駅までの間で適当な赤提灯を探してもよかったのだが、いつものホルモン屋まで足を運んだ。
「いらっしゃい。おう、シンちゃんやないか。一人か?」
「うん、一人や。今日はヒデちゃん和歌山へ出張や。向こうで飲んでるんちゃうかな。」
「一人にしては、いつもより遅い時間やな。残業か、それともどっか行ってたんか。」
「ちょっとね。とりあえずビールとミックス焼きと塩キャベね。」
そんなに空腹感はなかったのだが、ここへ来るといつもの注文をしたくなる。
「ところでシンちゃん、この間の彼女の話はどうなったん。」
親方は先日の話を覚えていた。
「まだ彼女ちゃうねん。せやけど進行中ではあるかな。今も会って来た帰りやねん。」
「おいおい、それにしては時間が早すぎひんか、まだ八時やで。」
「会って来たっていうたかて、デートしてたわけちゃうし。ちょっと買い物付き合っただけやねん。彼女は今からお母さんと待ち合わせらしいし、時間調整のために呼ばれたみたいなもんや。」
進也は思った。我ながらウソをつくのが上手くなったなと。
「まあええがな。シンちゃんはヒデちゃんと違って慎重やからな。せやけど、その慎重さが命取りになることもあるんやで、行くときは行かんなアカンで。」
いつになく親方もこの話には乗り気だ。
「ワシはお前さんを見てて思うねんけどな。シンちゃんは真面目すぎる。ヒデちゃんはちょっと遊びすぎてるけど、あいつの大らかなとこも少し見習った方がええと思うねんで。特にシンちゃんの女の子に対する接し方がな、見ててもどかしいときがあんねん。」
「ボクは確かに慎重派かも知れんけど、それで不自由やと思ったことはないで。」
「ちゃうちゃう。端から見ててな、女の子が明らかに待ってるのを見過ごしがちやと思うで。別れた奥さんかて、その辺が物足らんかったんちゃうかな。」
進也は明らかに少しばかり痛いところを突かれたのである。離婚調印の後、別れ間際に言われたことがあった。
「あなたは自分のしたいことをはっきり事前に言わないタイプ。全ての方向性が決まってからしか相談してくれなかった。それはパートナーとして淋しい。」
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