◆進也の性格とドライブと・・・

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それは進也が最近気に入っている女の子グループの曲である。メロディーもさることながら、歌詞の内容が特に気に入っていた。それは、ある程度の大人になった人たちが若い頃に遣り残した努力に対する憤りを綴った内容のものが多かった。 進也も学生の頃にいくつかの諦めを経由して今があるので、戻れぬ過去への嫉妬が心のどこかに埋もれていた。だからこそ、若い女の子たちに歌わせている歌詞の内容に心打たれるのである。 そして、まさに今、進也は若い頃に戻ったかのような恋愛を繰り広げようとしている自分がいる。後悔の無い様に自分を生きたいと奮い立たせるのである。 「今度カラオケに行く機会があったら歌えるで。」 「ほんならミホも練習しとくわ。」 「今度一緒にドライブ行くときは、ミホの好きな音楽持っておいで。ボクもミホがどんな音楽聴いてるんか興味あるし。」 「無理して合さんでエエねんで。ホンマはシンちゃんも演歌とか聞くんちゃうん。」 「そんなん全然聞かへんで。あとはSバンドとかGGボーイズとかやな。それよりもベートーベンとか聞くかも。」 「ああ、あの眠たくなるやつな。お願いやから、このクルマの中ではやめてな。」 「せやな、ボクも釣られて居眠り運転になったらアカンからな。」 車中の会話は思いのほか弾んだ。途中でSAによって休憩もした。側にあるベンチに座って手をつないで景色を楽しんだが、霜月の風は長くその時間を与えてはくれなかった。 道は南の方へ向かっているけれど、決して南国へ行くわけではなく、陽気な風が出迎えてくれるわけではない。むしろ山際の道を通るので風が吹けば都会の空気よりも冷たい。 「とりあえず、あと一時間ぐらい。ゆっくりいこか。」 「運転すんのはシンちゃんやし。」 ほっと一息入れた二人は、いざ和歌山へとクルマを進めた。 「ところでミホは運転免許持ってるん?」 「一応な。高校卒業してからとったし、クルマも持ってるで。」 そんな話は初耳だった。 「どんなクルマ乗ってんの?」 「女の子やで、かわいいクルマに決まってるやん。」 「ほんで飛ばすんやろ?」 「えっ、なんでわかるん。」 「顔に書いてあるで、飛ばしたいって。それに、ボクの運転でも平気な顔して乗ってるやん、少々のスピードやったら平気ってことやんか。」 とはいえ、無理してスピードを出す必要もないのが今日のドライブ。
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