◆進也の性格とドライブと・・・

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二人を乗せたクルマは滑る様に走り、山々の景観を堪能しながら和歌山へ到着した。 マリンシティは和歌山市の海沿いに設置されている海浜公園である。いくつかのアトラクションと海鮮市場が隣接され、ちょっとしたデートにはもってこいの場所である。 無事にパーキングまで辿り着いた二人は、大阪よりも少し温かく感じる和歌山の空気を満喫しながら背伸びした。 「やっぱりこっちの方が少し暖かいな。」 「そうかも。ええ天気でよかったな。」 「まだランチには少し早いし、遊覧船でも乗らへん?」 進也は波止場に停泊している遊覧船を指差し、ミホの顔色を伺う。 「ええで。クルマの後は船やな。ミホを乗り物で酔わせる作戦?」 「ん?その作戦、何の役に立つん?」 「か弱い女の子は乗り物に弱いねん。」 「か弱いとこ見てから考えるわ。とりあえず行こ。」 二人は約一時間の周遊コースを走る遊覧船に乗り込んだ。白浜とは違い、海中を観覧するものではない。シティの船着場から南の方へ下って行き、いくつかの島々を見学する、何とものんびりした遊覧ツアーだ。 特に島に対する知識も博学もないので、一時間揺られている間が二人の蜜月タイムとなるのである。流石に外では風が冷たいので、船内のシートに肩を並べて座っている。 「案外揺れへんもんやなあ。これぐらいやったら平気?」 「うん。大丈夫やで。ミホは乗り物平気やもん。」 進也はミホの体温を感じていた。ミホも進也の温もりを受け止めていた。景色よりも寄り添う時間の方が優先した遊覧船の航行は、この日の二人のスタートに最適の乗り物だったかもしれない。 一時間の遊覧コースが終わると、ちょうど空腹感を感じる時間になっていた。ここには遊園地もあるが、それらのイベントは前回のデートで体験済みである。今回進也は、海鮮市場見学ともう一つの遊びを用意していた。 「ミホは魚大丈夫?」 「美味しい魚は大好きやで。」 「よし、ほんなら美味しそうなの探してランチにするか。」 海鮮市場の中には、より取り見取りのお店が並んでいた。港から上がってくる魚の種類はどの店も似たようなものだが、和食であったりイタリアンであったり、はたまた中華であったり。 進也もミホも折角だからと、新鮮な魚を刺身で提供する店をチョイスした。 「折角やから、違う魚を選ぼうや。」
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