◆進也の性格とドライブと・・・

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竿を上げると恐らくはアジだろう、さっきよりも一回り大きな魚がぶら下がっていた。 「今日はミホの方に運があるんちゃうかな。」 「いやいや、これからやし。まだわからへんで。」 とは言いながら、進也は勝負に勝つことよりもミホの笑顔を獲得する方が大事。自分の竿に余り大きな獲物がかからないように願っている。 「運が良かったら鯛が釣れるらしいからな、がんばらな。」 それでも進也の釣竿にはせいぜいアジが数尾揚がった程度だった。それに引き換え、やはり運は女神にあったのか、ミホの竿には進也も知らない十センチを超える魚が揚がった。これにはミホも大喜び。しかし、二人とも釣った魚を持って帰るわけにもいかず、隣で釣っていた親子連れの少年に全てをプレゼントして海釣り公園を後にした。 「ああ、楽しかった。釣りっておもろいな。シンちゃんに勝てたから、さらにおもろい。」 「ミホに喜んでもらって良かった。さあ、手を洗って次のとこへ行こか。」 「次はどこへ行くん?」 「そうやな、ちょっとだけ移動して水族館に行こか。そこやったら屋内やから寒かったりしいひんやろ。」 「ええ考えやなあ。ついでにそこにカフェがあったら嬉しいなあ。」 「よし行くでぇ。」 日が傾きかけた午後三時。少しずつ気温が落ちてくる。それでも二人の間には寒さを感じさせない空気があった。 水族館の中にカフェはあった。時間帯がいいのか空席もあり、まずは一息入れる二人。 「あんまり大きな水族館やないから、見て回るのは一時間もかからへんかもな。」 「大きな水槽があったらええのにな。大阪の海水館の水槽はめっちゃ大きいから迫力あってよかったけどな。」 「あれとおんなじもん期待したらアカンで。何せここは県立やねんから。」 確かにミホが期待したほどの大きな水槽はなかったが、色々な熱帯魚や珍しい外国の魚も展示してあり、何気に一時間ほどは楽しめた。 館内を歩く間、二人はどちらからともなく腕を組み、手をつないでいた。まるで本物の恋人同士のように。 進也にとっては、まさに夢のような時間だった。そして、時間が経つにつれて緊張感が高まってくる。 「さて、そろそろ大阪へ戻ろうか。」 「まだ時間早いで。今度はどこへつれて行ってくれるん。」 「内緒や。急がへんけど、そろそろいこか。」
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