◆進也の性格とドライブと・・・

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告白するのは食後のタイミングだとは思っていたし、帰りのクルマの中での不味い雰囲気をどうやって過ごそうか悩んでいたところだった。しかし、その悩みは彼女の一言であっという間に吹き飛んだのだ。 「ついでにリナも告白するけど、来週いっぱいでミホはお店を卒業すんねん。社長もエエって言うてくれたし。」 「ホンマに?リナちゃんっていうのもエエ名前やな。店も辞めてくれるんやったら、なおさら嬉しいな。やっぱり他のお客さんに預けられるんはイヤやし。今日は嬉しいことばっかりやな。」 「そう言うてくれると思った。来週の日曜日をラストデーにするつもり。お店にはそう言うてある。」 次週の日曜日といえば十一月最終日曜日。日曜日の来訪客は意外と少ない。最後は自分の手で送り出そう。進也はこの時そう決めた。 「ほんならボクはそのラストデーに行くわ。最後はボクが送り出したい。」 「シンちゃん、お店の人に冷やかされるかもよ。」 「ん?なんで?」 「ミホのやめる理由、シンちゃんと付き合うことになったからやもん。そやからお店のブログでも『もうキスはできません』って書くつもり。これからはシンちゃんだけの唇になるんやし。」 「ホンマに?ボク、お店の人に怒られへんかな、お店の女の子に手を出して。」 「手はまだ出してないやろ。せやからお店の人もエエって言うてくれてんで。本気やって思ったんやろな。」 「なんか恥ずかしいな。でもミホが卒業したら、もうあの店も行くことなくなるから、出禁になってもエエけどな。そろそろ帰ろか。今日も無事に送り届けなアカンし。」 時計の針はそろそろ午後八時を指そうとしていた。 「ふふふ、まだそんなこと言うてるし。」 「流石に今日の今日はな。今度のデートの約束はまた電話するし、今日はいつも通り無事に送らせて。」 「うん。」 一大イベントを無事に終了した進也は、最後に滑走路の見えるゲートへ誘い出す。冷たい風は吹くけれど、二人の体は熱く燃えていた。 どちらからともなく唇を求めあい、吐息と温もりを交換し合う。二人のシルエットは長い時間一つになったまま動かなかった。誰の目線も気に留めずに。 「帰りは来るときよりも安全運転で帰るよ。」
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