◆進也の性格とドライブと・・・

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進也はミホを助手席にエスコートしてエンジンをかける。そこからK市までは、高速道路を使えば二時間はかからない。それでもゆっくりと幸せな時間を楽しむようにしてハンドルを操作する進也。クルマの中で流れていた音楽は進也の耳には入って来なかったろう。 やがてK市の駅に着き、クルマをロータリーの端に静かに停める。 「今日はここでエエで。自転車あるし。」 「リナ、おやすみ。今日はホンマにありがとう。呼び慣れるのにしばらくかかるかも。」 「呼ばれ慣れるんもしばらくかかるかもな。」 そして二人は車中で熱いキスを交わす。今宵最後となるキスを。ゆっくりと。 進也にとって長い一日が終わった。 出かける前から、今夜の告白を決めていたので、まずは無事に帰ってこられたことに安堵した。そして彼女となったリナからもらった返事と報告が、思いも寄らぬ喜ばしいものであったことに嬉しさを噛み締めていた。まさに彼は有頂天の真っ只中にいたと言っても良いだろう。 さて問題は明日以降のことである。 このことを秀雄に知らせるべきか、ホルモン屋の親方に報告すべきか。 進也の出した答えは否やであった。少なくともリナがミホとして店を卒業する日までは伏せておくことにしよう。そうでないと、きっと秀雄はミホのラストデーにノコノコとついてくるに違いない。そんな日に最も店で会いたくない人物の一人である。 そしてこれからリナとどう向き合っていこうか。干支で言うとおおよそ一回りほど違う年の差を意識しないといえばウソになる。それでも彼女を大事に思う気持ちに変わらない。 年甲斐もなく、興奮して眠れぬ夜になりそうだ。そんなことを思いながらこの日を終えた進也であった。
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