◆ミホのラストナイト・・・

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◆ミホのラストナイト・・・

翌朝、進也はしょぼしょぼとした目でベッドからむっくりと起き上がる。今日が平日でなくて良かったと心から思っていた。やはり昨晩はあまりよく眠れなかったようだ。 顔を洗ってモーニングの用意をしていた頃に進也のケータイが音を立てて騒ぎ立てた。 「もしもしオハヨー、リナやで。誰かわかってる?」 「おはよー。もちろんわかってるよ。今ちょうど起きたとこ。もしかして見てた?」 「ううん。そんなわけないやん。リナもさっき起きてんけど、シンちゃんどないしてるんか気になって電話してみてん。電話しても大丈夫やった?」 「もちろん大丈夫やで。せやけど。実は興奮してて、昨日の晩はあんまり眠れんかった。まだ目も半分しか開いてないかも。」 「リナも。家に帰ってからの方がドキドキしてきて、夜中に二、三回目が覚めた。せやからちょっとだけまだ眠いねん。今日はお昼の仕事が休みやったから良かったけど、夜はお店に行かなあかん日やし、今からシャキッとしとかなと思て。ところで、今度はいつ会えるん?」 「今すぐでも会いたいけど。行ったら会える?」 「会いに来てくれるん?」 「行くのはええけど、その代わり寝られへんで。夜も遅くなるんやから、ちゃんと寝てた方がええで。倒れてもらったら困るし。」 「うふふ。優しいな。」 「会うだけやったら明日でも明後日でも会いに行くから、今日は夜に備えてちゃんとお昼寝しといて。」 「わかった。シンちゃん、明日の仕事終わったら会いに来てな。」 「うん、クルマ飛ばして絶対に行く。」 今日のところはそう言って電話を切った。 その日の夕方、『エロチックナイト』の中のお嬢さん方のブログを見てみると、ミホの記事がアップされていた。 『ミホは来週の日曜日で卒業しまーす。良い人ができたので、もうキスもお触りも禁止でーす。それでもOKな人だけ来てね。ちなみに月曜日はお休みします。』 その記事を見てはにかむ進也。より身近な存在となった彼女のことを想い、悦に耽る。 そして、この日を境にミホの客は順々に離れて行き、この夜の日曜日も翌週の水曜日もほとんどヘルプ周りだけの嬢となっていた。 進也は眠い目をしょぼつかせながら、朝から始めたのが部屋の掃除である。いつかリナが部屋を訪れることになるかもしれない。そう思ったら、今の部屋の現状を見渡したときに一番にしなければならないことだと思ったのである。
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