◆ミホのラストナイト・・・

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これを契機に進也の生活は一変していく。 例えば、部屋の掃除から始まった身の回りの整理については、溜まりがちだった洗濯物を率先して行ったり、できるだけの外食を避けて自炊を試みたり、無駄な買い物をなくしたりと、健全な生活環境へと変わっていくこととなるのである。 そして告白から翌々日となった月曜日、和歌山から帰ってきた秀雄が朝から絡んでくる。 「親方から聞いたで、えらい慎重なんやってな。女の子なんて積極的にいかなあかんで。」 「朝からストレートなアドバイスをありがとう。せやからボクにとっては手順があんねんって言うてるやん。もうちょっとそっとしといて。ほんでもってついでに言うと、今日も仕事終わってから、その女の子と会う約束してるから。」 「おうおう、手順通りっていうわけやな。まあがんばり。」 和歌山帰りに寄ったのか、昨日行ったのか、ホルモン屋の親方から進也の話を小耳に挟んだ様で、朝から進也の新しい恋の話に興味津々のようだ。 進也も話の展開上、いつかは秀雄にも親方にも話をしなければならないときが来るかもしれないと感じていた。 それはそれとして、今夜は仕事終わりにリナに会いに行くと決めている。終業時間が待ち遠しいのは店通いのときと変わらない。 本来ならば月曜日はミホの出勤日であるが、ブログで宣言したように、この日は休むことになっていた。つまり、ミホの出勤日は残すところ、水曜日とラストデーとなる日曜日のみになったということである。 進也は終業時間と共に一目散に帰宅した。もちろん、昼休みなどを使ってメールでのやり取りをしているので、待ち合わせの場所と時間はすでに決まっている。K市駅ターミナル午後七時三十分である。前回のドライブデートのときの待ち合わせ場所と同じなので、間違う心配はない。 今日の予定は軽く晩御飯。 もう気分は中高生と同じである。結構エッチな店で知り合ったのに、今は純粋な気持ちで臨んでいる。なんだか不思議な気分に包まれていた。 進也のクルマは待ち合わせの時間にやや遅れて到着した。ターミナルの端に立っていたリナは進也のクルマを見つけると、すぐに駆け寄ってきた。 「ゴメン、少し道が混んでて遅れてしもた。」 「しゃあないな。抱っこしてくれたら許したる。」 あたりはもう暗い。すでにドアを閉めたクルマの中で行われている抱擁の詳細な行為までは確認できない。
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