◆ミホのラストナイト・・・

3/7
前へ
/209ページ
次へ
「抱っこだけかな?」 「うふふ。」 リナは少しはにかんでから唇を預けにいく。しかし車の中とはいえ公の場所。一つになるシルエットの時間は短く済ませる必要があった。 「ご飯を食べに行こう。今日は何が食べたい。」 「今日は回る寿司を食べに行こ。あんな、別に普通でええねん。無理してお洒落な店とか行かんでええねんで。普通のシンちゃんの姿を見せてな。」 「うん、わかった。ほんなら回る寿司を食べに行こか。」 クルマはK市駅のターミナルから国道へ出て、近隣の回る寿司の店に向かった。 「和歌山のデートを思い出すなあ。あのときの魚は美味しかったなあ。」 「せやな、リナは魚釣りでシンちゃんに勝ったのを思い出す。」 肩肘張る必要のない回る寿司屋での食事は進也にとって、とっても気分が楽だった。魚好きの進也は、割りと頻繁に回る寿司屋を利用する。今日は気分的にもラフな二人なので、カウンター席で十分だ。 「リナはいつもどんなネタを食べるん?」 「そうやなあ、サーモンはデフォやな。あとは白身魚とか貝が好きかな。シンちゃんは?」 「ボクはイワシとかサバとか青い魚を食べて、あとは魚卵に行くのがパターンかな。」 まずはお互いの好みを披露し合う。 「お店辞めたらどうするん?お金が必要やったんちゃうの?」 「えへへ、ちょっと遊ぶお金が欲しかったんや。でも昼間の仕事と掛け持ちがしんどくなってきたし、どっちみち近いうちに辞めようと思ってたから丁度良かってん。」 「これからはボクと遊んでくれることになるんかな。」 「いっぱい遊ぼな。なんかめっちゃ楽しみやわあ。」 「そや、今日みたいにクルマで行き来しなアカンねやったら、いっそのことボクがこっちの方へ引っ越して来ようかな。」 「ホンマに?エエ考えやな。それともリナがそっちへ行こかな。ぼちぼち一人暮らしもしてみたいし。」 「なんやったら一緒に住む?」 「・・・・・・・。」 ちょっとした沈黙が流れたのち、リナが呟くように問いかける。 「いきなり?」 「せやな、いきなり早いな。」 進也は少し気まずい雰囲気を払拭するかのように、手元の茶をすすっていた。 「でもいずれは一緒に住んでもエエかな。」 そう言ってリナはニッコリと微笑みながら進也の手を握った。 「今日も可愛いなあ。」 進也はリナの笑顔を見て素直にそう感じ、素直に口に出す。 「えへへ、照れるやん。」
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加