◆ミホのラストナイト・・・

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「今日は何時に帰ったらええの?」 「いっつも言うてるやろ、子供やないねんから。まだ全然大丈夫やで。」 「ほんならちょっとドライブに行こか。」 「うん。」 進也とリナは二人で二十五枚を平らげて店を出る。そして颯爽と車に乗り込んだ。 「ほんで、どこに連れてってくれるん?」 「京都に行こか。」 「京都のどこ?今から?夜やで?」 「えへへ。」 進也は特にどことは告げずにアクセルを踏んで、クルマを北へと差し向ける。K市から京都市へは国道一七一号線で繋がっている。やがてその延長に国道一号線があり、進也のクルマはさらに先へと進んでいく。 東山を過ぎ、あと少しで滋賀県との県境に指しかかろうとする頃、ハンドルを回して側道へと入って行った。そこから少し坂を登り、やがて現れる駐車場。 あたりは薄暗く、あまり街灯はない。それでも他に何台かのクルマが駐車していた。進也は静かにエンジンを切り、リナを外へと連れ出す。 「ここはな、将軍塚というて京都では有名な夜景スポットやねんで。」 歴史的な史実関係までは進也も知らなかったが、歴代の天皇に関係している墓らしい。最近はなかなか来る機会もなかったが、今も昔も絶好の夜のデートスポットであることには違いない。 進也は薄暗闇の道をリナの手をつないでエスコートしながら展望台へと歩く。やがて広がる京都市内の夜景。 「うわあ。すごいきれい。シンちゃんすごいな、こんなとこ知ってんねや。」 しばらく立ち止まって夜景を眺めていたリナの肩を後ろから抱きしめる進也。やがて薄暗闇に目が慣れてくると、周りの状況が明らかになってくる。そう、ここはデートスポットなのである。進也たちと同じように一つに重なっているカップルが何組か垣間見られる。 「シンちゃん、ココってこういう意味でもすごいとこやねんな。」 「周りのみんなと一緒やから平気やろ?」 二人はしばらくの間、初冬の京都の夜景を眺めながら、互いの体温を確かめ合っていた。正面には京都タワーが光っており、その奥には大文字の山々が見えるはずなのだが、流石に夜だけに薄っすらとそのシルエットだけが浮かんでいた。 「リナとずっとこうしてたいな。時間が止まったらエエのに。」 リナの耳元で呟く進也。 「時間が止まってもお腹って空くんやろか。」 突然面白いことを言う。ちょっと躊躇した後で進也は答えた。
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