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「ご馳走様でした。片付けは手伝ってもエエねやろ?」
「うん。手伝ってくれると嬉しいな。」
「その前にデザート食べんとな。」
「ん?」
進也はリナの隣に移動して彼女の腰に手を回す。そしてゆっくりと体を引き寄せて、唇を求めにいった。
抵抗するそぶりも見せず進也の行動を受け入れるリナ。やがてリナの両手は進也の首筋に回される。時間の動きがスローに感じられる二人。
「ボクの中ではこの唇が最も甘い。最高のデザートやなあ。」
「うふふ、今はケチャップの味やろ?そら甘いで。」
「ボクは匂いフェチやで、吐息の匂いが甘いねん。」
これらの会話は店の中で交わされていたおしゃべりの延長のようだ。しばらくの時間は進也もリナの甘い唇と吐息を楽しんでいた。そして衣服の上からでもわかる柔らかい感触が感じられる頃、進也の欲望の部分が動き始める。それに気づいた進也は、リナの体を一旦離してインターバルを入れる。
「軽いデザートはご馳走になったから、まずは片づけをしてしまおか。」
「うん。でもその辺がオトナやな。ちゃんと歯止めが効くんや。」
「お楽しみは後に取っておくタイプやねん。」
そういってリナの手を取って立ち上がる。
元来、後片付けは苦手な進也。それでもリナと一緒にできる作業は楽しい時間であることに他ならない。リナは片付けながら料理ができるエライ子だったので、実際の片付けにかかった時間は十分ほどだった。
ある程度、終了の時間を見つけると、進也はコーヒーの準備に取り掛かる。湯を沸かし、ドリップの用意をする。カップもお揃いのものを並べてみた。
全自動のコーヒーメーカーは持っていないが、進也はこの手作業が好きなのである。やがて湯が沸いてドリップの上に注がれると同時に漂ってくる心地よい豆の香り。
「もちろん飲むやんな。」
「もちろんもらうで。エエ匂いやし。」
ソファーに並んで座る二人。すでに腕はお互いの腰に絡み付いている。コーヒーの香りと互いの体臭が交差しながら、二人の距離を縮めていく。
気が付けば、互いの唇はすでにその距離が皆無な状態にあった。横に並んで座っていた形も、それぞれのフリーな腕が互いを呼び寄せているうちに、正面を向き合って抱き合うようになっていた。いつものようにネットリとした甘い香りが漂っていた。
「今日はエエねんで。今までガマンしてくれてありがとう。」
それだけ言い残してリナはそっと目を閉じる。
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